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【第3号】                 平成19年1月27日配信

            東京長高会メールマガジン

・・・望郷通信・・・

 

 

 

 

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 新しい年が始まり、もう1月近くも過ぎてしまいました。

今年は、東京長高会にとってどんな年になるのでしょうか。

 

 

さて、

1月16日、築地亀屋にて東京長高会の正副会長、幹事長の

新年会を開催しました。

出席者:荒井会長、田中副会長、猪瀬副会長、矢島、柳町、小池、榎本、左治木

年もあらたまり、場所もかわって魚河岸のそばというわけでしょうか、正副会長の
間で大所高所からの意見交換が活発にでました。

 

講演会を充実させる、メルマガをもっとたくさん発行し、会員への情報を提供する。

など、基本的な方針が決まりました。

 

そこで、さっそく、今年初のメルマガを発行しますが、

今回は、猪瀬直樹さんメルマガに寄稿された

荒井会長の文章をそのまま、お借りして発行いたします。

なお新井会長は、昨年末まで小泉内閣の下で内閣官房・知的財産戦略推進事務局長を務められていました。

今後も、猪瀬さんのメルマガ記事をときどき、お借りすることになりそうですが、

直接、猪瀬さんのメルマガ希望される方は、一番下の方に

申し込みのアドレスがありますので、そちらから申し込んでください。

 

                              (東京長高会副幹事長:榎本功子)

 

★★★★★★★★★

 

 

 

                 2006年10月26日発行 第0417号 論説
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 ■■■    日本国の研究           
 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
 ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html

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「知財革命が始まった! モノ作りからチエ作りへ」

             内閣官房・知的財産戦略推進事務局長 荒井寿光

 日本は米欧から技術導入をして良いモノを安く作ることにより工業国家とし
て成功した。しかし、アジアの追い上げもあり21世紀の日本はチエ作りに力を
入れなければならない。

●知的財産は技術・芸術・信用をカバー

「知的財産(知財)」という言葉を新聞などでよく見かけるようになった。

 知的財産は、人間の知的な活動を大事にしようとするものだ。特に技術・芸
術・信用の3つの分野における「知的な汗の結晶」を社会的に尊重し、法律的
に保護しようというもの。

 技術分野では、研究開発をする人にインセンティブを与えるため、新しい発
明をした人に特許として20年間の独占を認めている。芸術分野では、映画、音
楽、アニメなどは著作権として保護される。製品が複雑になってきているので、
消費者はいちいち商品の性能をチェックして買うことが出来ない。製造した会
社を信用して買うことになる。そこで会社や商品の信用(ブランド)が大事に
なってきているが、これらは商標権として保護される。
 
●21世紀は知の大競争時代

 人類の歴史を見ると、最初は農業社会だったが、18世紀の産業革命を経て工
業社会になった。21世紀はIT革命により知識社会に入りつつある。ここでは、
知識・情報の価値が重要になり、知的活動がきわめて高い価値を持つ。

 知的活動の成果としての知的財産が重要になるのは歴史的な必然だ。

 知の大競争を勝ち抜くためには、知財戦略が決定的に重要になっており、知
財も革命的に変化している。

 ・特許はモノの作り方を対象とする製法特許から、薬などの物質特許、さら
  にはソフトウェア特許や遺伝子特許など新しい技術フロンティアに急速に
  拡大。

 ・大型映画では著作権者が数百人にのぼり、制作費用も百億円を越すに至り、
  著作権も芸術家個人の権利を守るだけでなく、技術的貢献や投資に対する
  リターンを保証するように役割が拡大した。

 ・グローバリゼーションの進展により、知財も国内保護から国際的な競争に
  移っている。

 ・リナックスなどのオープンソースソフトウェアに代表されるように知財の
  独占に対抗する動きが大きくなり、ヨーロッパではソフトウエア特許反対
  のデモも行われた。

 ・エイズの薬がアフリカの患者に届くようにするため特許権の行使を制限す
  る声が高まるなど、知財をめぐる南北対立が激化している。

 知財は、今や国際摩擦の大きな火種となっている。なぜならば、世界の貿易
の主役が、製品から知財、技術に代わりつつあるからだ。

 知財戦略・知財保護の善し悪しが、国家の国際競争力を左右する時代になっ
た。知財戦争においては、脇の甘い国と、そうではない国とでは大きな違いが
生まれてしまう。

●知財侵害もモノの窃盗と同じ刑事罰に

 2006年6月、意匠法等の改正法が成立した。そのポイントは、特許法と意匠
法、商標法の侵害罪、そして不正競争防止法に規定されている営業秘密の侵害
罪を懲役10年以下にするという罰則強化だ。

 従来、モノを盗むのは窃盗であり、厳罰を持って臨むが、知財を盗むことに
は厳罰を持ってまでは臨んで来なかったが、こうした姿勢も改まったわけだ。
今後は、「モノを盗んでも10年、特許を侵害しても10年」。情報社会において
は、「知的財産権を侵害することは、モノを盗むのと同じく重大な犯罪」とい
う位置づけになったわけで、これは画期的な進歩だ。

●和魂洋才から自主技術へ
 
 日本では基本特許は外国から買ってくればいい、技術導入をすればいいとい
う考えが強かった。

 そもそも日本は明治の時代から、「和魂洋才」をモットーとしてきた。これ
はまさに、技術導入の考え方だ。

 いまだに、基本発明を重視し、基本特許を自分で取って国際競争力を強めよ
うとする企業はそれほど多くない。昔ながらのビジネスモデルと言っては何だ
が、諸外国から技術を買ってきて、それを使っていい製品を安く、効率よく作
ろうとしている会社が多い。

 確かにそのモデルで日本は一時代を築き、「ジャパン・アズ・ナンバーワ
ン」(世界一の日本)ともいわれた。しかし、バブル崩壊後、失われた10年を
経て、気がつけば世界の工場といわれた地位は完全にアジア諸国に奪われてし
まった。今や日本の国際競争力は低迷しているが、その大きな理由は、基本特
許を持っていないからだ。

●小泉首相の知財立国宣言が幕開け

 2002年2月、小泉首相は画期的な施政方針演説を行った。「わが国は、研究
活動や創造活動の成果を知的財産として、戦略的に保護・活用し、わが国産業
の国際競争力を強化することを国家の目標とします」。これは、日本の首相と
して明治以来初めての「知財立国宣言」である。

「日本には、天然資源はないが、日本人は才能に満ち溢れている、日本人には
発明の才もあるし、ゲームソフトや映画を作る才もある、だから頑張ろう」と
いう小泉首相の呼びかけを受け、大学や企業の意識もかなり変わった。

 同年11月には、「知的財産基本法」を制定し、2003年3月には知的財産戦略
本部を発足。7月には、「知的財産立国」を実現するための行動計画である
「知的財産推進計画」を決定した。異例のスピードだ。

 この計画では、特許審査の迅速化、知的財産高等裁判所の設置、ニセモノの
取り締まり強化など、知的財産を守って国際競争力を強くするために日本がす
ぐに取り組まなければならない、知的財産の創造・保護・活用・コンテンツ・
人材育成をカバーした約270の方策が盛り込まれた。

 日本でも国を挙げて知的財産を守り育てようという時代に突入したのだ。

●安倍政権もイノベーションを重視

 安倍首相も就任直後の所信表明演説で「イノベーションの力とオープンな姿
勢により、日本経済に新たな活力を取り入れます」と力説している。

 政府の知的財産戦略の考えは、知的創造サイクルを早く大きく回すことだ。

 大学や企業が研究開発を行った成果を、国が特許などで保護し、さらにその
技術を実用化、事業化にスムーズにつなげ、そこで得られた利益をまた研究開
発費に注ぐというサイクルの確立を意味する。イノベーションの考えだ。

 企業にとって、国家にとって、諸外国との競争力の源泉となるようないい発
明、技術開発、創作活動を大いにしてもらって、それをしっかりと保護する。
モノが盗まれないようにするのと同じように、知的財産を守る。そうした国家
の枠組み、仕組みを考える。オリジナリティのある、世界の標準になる技術を
創造し、その技術を高く売るという気構えが必要だ。
 
●産業は学問の道場なり

 重要なのが大学の知財戦略である。そもそも大学や公的研究機関には、企業
の研究開発では生まれにくい創造的な発明を生み出し、それを社会に還元する
という機能も求められている。しかし、日本の大学は、この機能を十分に果た
していない。

 かつて東北大学の本多光太郎総長が、「産業は学問の道場なり」と言った。
この意味は、自分の研究の成果を検証するという意味においても、せっかくの
研究の成果を論文だけで終わらせてしまうのは、いかにももったいない。実用
化することで、経済社会に貢献しなければ意味がない。実用化すれば、研究室
の実験設備ではなく、実社会のデータが集まってきて、新しい学問上の課題も
出てくる。学問としても鍛えられる。そのためにも、ぜひ特許はとるべきだ。

 大学は象牙の塔に閉じこもるのではなく、産学連携により社会との交流を促
進することが必要だ。

 全国の多くの大学で、知的財産本部を作った。この本部は、司令塔として知
的財産について全体を見る役割を担い、大学のパテントポリシー(特許戦略の
政策)を作りあげる。そうした総合センターとして動き始めている。
 
●アジアに流出する営業秘密

 日本のさまざまな知財が、中国や韓国など、アジア諸国に流出しているとい
う深刻な問題がある。

 たとえば、よく耳にするのが週末のアルバイトだ。エンジニアが関西空港を
金曜の夜に出て、中国や韓国、あるいは台湾などに出かけ、会社に無断でセミ
ナー活動を行ったり、生産技術などを指導し、月曜日の朝、帰国してそのまま
出社するという。

 あるいは早期退職し、自らの技術やノウハウを携えてアジア諸国へ出かけ、
高給で雇われ、現地の技術者や工場労働者を指導する。

 さらに次の被害事例が実際に起きているという。

 ・外国企業とのJVで開発していた触媒の作り方について、ノウハウを身に
  つけた従業員が退職し、秘密保持契約に反して転職先でノウハウを漏らし
  た疑いがある。

 ・日本国内に生産拠点を持たない外国企業が東京近郊に「デザインセンタ 
  ー」を設置し、リストラで早期退職した社員を大量に雇用している。毎日
  出勤する必要はないらしいが、2年たってノウハウを吸い取ったら解雇さ
  れると聞く。
 
 ・コンピューターの周辺機器の販売担当部長が退職時に部下を引き抜くとと
  もに、退職直前にメインフレームの稼働リストをプリントアウトして持ち
  出した。

 ・プラズマディスプレイの生産部門の責任者である事業部長が外国企業に移
  籍し、その部下数名も移籍。その後の外国企業の開発・実用化のスピード
  をみるに、この元部長らが退職時に営業秘密が記録されたデータ等を持ち
  出したとしか考えられない(経済産業省「平成17年度改正不正競争防止法
  の概要」21ページ)。

 これは何とかしなければいけない。

 パソコンや資料を社外に持ち出してはいけない。夜間や週末に仕事をする必
要があれば、それは会社においてきっちりと残業や休日出勤として行う。そし
て、そこで得られた成果は会社に帰属するものであるということを明確にする。
そういう当たり前のルールをしっかりと作り、守らせる必要がある。

●重要性を増すコンテンツビジネス

 著作という行為には、文化とビジネスという二面性がある。その文化性は言
うに及ばないが、最近では、そのビジネス性にも大いに注目が集まっている。
ビジネスの規模が大きくなることで、雇用の機会も増え、それで潤う関連産業
の裾野も広がるからだ。さらに、いい作品は簡単に国境を超える時代であるか
ら、日本の文化や芸術が世界に広まることに国としても応援しなければならな
い。

 ところで、著作権による保護を必要とするビジネスを、現在ではコンテンツ
ビジネスと総称している。今まで日本を支えてきた重厚長大な産業と並んで、
アニメーションやゲーム、あるいは映画や小説といったコンテンツ産業が重要
になってきている。

 宮崎駿監督の手になるスタジオジブリの一連の作品のように、一企業の枠を
超え、日本という国家のブランド価値を上げる作品やキャラクターも登場して
いる。アメリカでいえばハリウッド映画やディズニーのように、コンテンツは
国の宝となるものなのだ。

 政府は、それまで業界ごとにバラバラで対応してきたコンテンツ産業を、総
合的に見て応援する方針だ。コンテンツの創造のための人材育成、資金集めの
ためのファンドづくり、ニセモノ対策などさまざまな努力をしていくことを決
めた。またコンテンツを輸出産業として育てる。日本のコンテンツを輸出する
ことは、日本のイメージアップのためにも大きな意味があると初めて位置づけ
た。

 これまで日本のコンテンツビジネスは、ゲームソフトを除けば大幅な輸入超
過で、国内産業にとどまっていた。それを国際産業に育てるために、多くの政
策がとられるようになった。

 今や知財戦略が日本の発展の鍵を握るようになってきた。

※知財の直面する課題と解決策をまとめ、拙著『知財革命』(角川書店、税込
 720円)として今年9月に出版した。ご一読頂き、ご批判頂ければ幸いで
 す。なお、本稿は私見です。

■著者略歴■
荒井寿光(あらい・ひさみつ) 2001年、知的財産国家戦略フォーラムを結成
し、知財立国のための100の提言を提案。2003年より、内閣官房に設置され
た知財戦略推進事務局長に就任。特許庁長官、通産審議官を歴任。東京理科大
学客員教授。
著書・編著書、『世界知財戦略』『知財立国』『特許戦略時代』など。

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